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デシル分析とは?活用のメリット・デメリットから実施手順まで解説

デシル分析とは?活用のメリット・デメリットから実施手順まで解説
目次

「顧客の購買行動を理解し、効果的なマーケティング施策を打ちたい」そのような悩みを解決する手法の一つが、デシル分析です。

本記事ではデシル分析の基本的な概念から、メリット・デメリット、具体的な実施手順まで詳しく解説します。ぜひ最後までお読みいただき、効果的なマーケティングにお役立てください。

デシル分析とは

デシル分析とは、顧客を購入金額に基づいて10等分し、各グループの売上構成比や購入比率を分析する手法です。

各グループは上位から順に「デシル1」「デシル2」……「デシル10」と呼ばれ、それぞれの購入金額や売上構成比、購入比率などを算出します。これらを分析することにより、売上に大きく貢献する上位の顧客層を特定したり、自社の売上構造を把握したりと、様々な経営上のヒントを得ることができます。

デシル分析は比較的シンプルな手法でありながら、マーケティング施策の効果測定や顧客理解に役立つため、幅広いビジネスで活用されています。

デシル分析の目的

デシル分析の主な目的は、自社の売上に貢献度の高い優良顧客を特定し、マーケティング施策の最適化を図ることです。


デシル分析で顧客をグルーピングすることで、売上の大部分を占める上位顧客層にフォーカスしたアプローチができるようになります。例えば上位20%の顧客に対してより手厚いサービスを提供したり、効果的なプロモーションを行ったりすることで、売上拡大や顧客ロイヤルティの向上につなげられるでしょう。

またデシル分析は、自社の売上構造を可視化する目的でも活用されます。各デシルの売上構成比を見ることで、特定の顧客層への依存度が高すぎないか、下位の顧客育成が進んでいるかなど、自社の課題を浮き彫りにできます。

このようにデシル分析は、データに基づいた意思決定を行うための重要な指標を提供してくれる有用な分析手法といえます。

デシル分析の活用方法

前述の通り、デシル分析は売上拡大や顧客育成など、様々なマーケティング課題の解決に役立てることができます。ここでは、デシル分析の具体的な活用方法を見ていきましょう。

優良顧客向け施策

上位デシルの顧客特性を分析し、最も価値の高い顧客層に焦点を当てたサービスや特典を提供する

新規顧客向け施策

上位デシルの顧客プロファイルを参考に、類似した特性を持つ見込み客をターゲットにしたマーケティング戦略を立案する

顧客の育成施策

下位デシルから上位デシルへの移行パターンを分析し、顧客価値を高めるための段階的な育成プログラムを策定する

このように、デシル分析は優良顧客の維持、新規顧客の獲得、顧客の育成など、様々なマーケティング施策に活用できる汎用性の高い手法です。自社の課題や目的に合わせて、デシル分析の結果を具体的なアクションに落とし込んでいくことが、効果的な活用方法となります。

デシル分析のメリット

ここからは、デシル分析を導入するメリットについて以下4点から解説します。


手軽で簡単に実施できる

デシル分析のメリットは、分析が手軽で簡単に実施できる点です。デシル分析は顧客の購入金額データさえあれば実施可能なシンプルな手法であり、特別な統計知識やツールを必要とせず、表計算ソフトを使った簡単な計算で分析を行えます。

そのためマーケティング分析の経験が浅い方でも取り組みやすく、分析にかかるコストも抑えられるでしょう。特に限られたリソースでマーケティング施策の効果を測定したい中小企業などにおすすめの手法といえます。

売上貢献度の高い顧客を可視化できる

デシル分析のメリットとして、売上貢献度の高い顧客層を明確に可視化できる点も挙げられます。

多くの企業で、売上の大部分を一部の優良顧客が占めているケースが少なくありません。デシル分析を行うことで、どの顧客層が売上に大きく貢献しているのかを数値として把握できるようになるのです。例えば上位20%の顧客で売上の80%を占めているといったことが明らかになれば、その層に照準を合わせたマーケティング施策を講じる必要性が見えてくるはずです。

デシル分析は、限られた経営資源を優良顧客に集中させ、売上拡大を図るための羅針盤となってくれます。

グループごとに効率的なアプローチが可能

デシル分析は、顧客グループごとに最適なアプローチを取れるというメリットもあります。顧客を10の層に分けるため、それぞれのグループの特性に合わせたマーケティング施策を講じられるのです。

例えば上位層にはより個別化されたサービスを提供したり、特別な優遇プログラムを用意したりするなど手厚いアプローチを取ることができますし、下位層に対しては購入頻度を高めるためのキャンペーンを打ったり、クロスセルの提案を行ったりするなど、それぞれに合わせた施策を展開できます。

このようにマス施策ではなくセグメントに応じたきめ細やかなマーケティングを実現できる点が、デシル分析の魅力といえます。

データに基づいた意思決定ができる

デシル分析のメリットとして、データに基づいた意思決定が可能になる点も挙げられます。

デシル分析は、顧客の購買行動を数値化し、可視化する手法です。そのため分析の結果、優良顧客層の特定や売上構造の把握ができれば、それを根拠としてマーケティング戦略を立案できるようになります。感覚や経験だけに頼るのではなく、データから導き出された示唆を意思決定に活かせるのは、デシル分析の強みです。

定量的な分析に基づいた施策立案は、PDCAサイクルを回すうえでも欠かせません。データドリブンなマーケティングを志向する企業にとって、デシル分析は非常に有益なツールとなるはずです。

デシル分析のデメリット

デシル分析にはメリットもありますが、いくつかのデメリットも存在します。ここでは、デシル分析のデメリットについて、以下3点から解説します。

購入金額以外の要因を考慮できない

デシル分析の最大のデメリットは、購入金額以外の要因を考慮できない点です。

デシル分析はあくまで顧客の購入金額のみに着目した手法であり、購入頻度や直近の購入日、購入商品の種類などは分析に反映されません。そのため、例えば高額商品を一度だけ購入した顧客と、安価な商品を頻繁にリピート購入している優良顧客を見分けることができないのです。

デシル分析を実施する際は結果を過信せず、他の指標も組み合わせて総合的に顧客を評価することが重要といえます。

顧客の属性を把握できない

デシル分析のもうひとつの弱点として、顧客の属性を把握できない点が挙げられます。

デシル分析では、年齢や性別、居住地域などの顧客属性は考慮されません。そのため、優良顧客の人口統計的な特徴を掴むことができず、ペルソナの設定やターゲティングの精度向上には活用しにくいといえます。

デシル分析はあくまで顧客の購買行動に基づく分析であり、属性情報に基づくセグメンテーションとは異なるアプローチだと理解しておきましょう。そのうえで顧客属性を組み合わせた分析を別途行うなど、補完的なアプローチが不可欠となります。

実施にあたって購買履歴データが必要

デシル分析を行うには、顧客の購買履歴データが必要という点にも注意が必要です。

自社ECサイトを運営していない企業や実店舗のみで販売を行っている企業の場合、購買データの収集や紐付けが難しいケースがあります。また購買履歴データを管理するシステムやツールが整っていない場合も、データ収集の手間やコストが課題となるでしょう。

デシル分析を実施する際は、必要なデータをどのように確保し、分析に適した形に加工するかという点もしっかりと検討しなければなりません。

デシル分析のやり方・手順

それでは、デシル分析の具体的な手順について解説していきましょう。ここでは、Excelを使ったデシル分析の進め方をステップごとに見ていきます。


1. 必要なデータを準備する

デシル分析を行うには、まず分析に必要なデータを準備する必要があります。

具体的には顧客IDや購入日、購入金額などの情報が必要です。これらのデータが顧客ごと、取引ごとに管理されている状況が理想的です。

社内の基幹システムやデータベースから必要なデータを抽出し、Excelなどの表計算ソフトで扱える形式に加工しましょう。

2. 顧客ごとの購入金額を集計する

データの準備ができたら、次は顧客ごとの購入金額を集計します。

Excelのピボットテーブル機能を使い、ピボットテーブルの行に顧客ID、値に購入金額の合計をセットすると、顧客ごとの購入金額が一覧で表示されます。

3. 購入金額の多い順に並べ替える

顧客ごとの購入金額が集計できたら、次は購入金額の多い順に顧客を並べ替えましょう。

購入金額の降順で並べ替えることで、購入金額の多い顧客から順に確認できるようになります。この一覧を見るだけでも、自社の売上に大きく貢献している顧客層を把握することができます。

4. 10等分してデシルを割り当てる

続いて購入金額順に並んだ顧客リストを、上位から10%ずつの10グループに分けます。各グループには、上位から順に「デシル1」「デシル2」といった名称を割り当ててください。

Excelの関数を使えば、この作業も簡単に行えます。顧客数を10で割った値を切り上げた数だけ、各デシルに顧客を割り当てていきます。こうすることで、購入金額の多い顧客層から順にデシル1からデシル10までのグループが作成されます。

5. 各デシルの指標を算出し分析する

デシルごとのグループ分けができたら、各デシルの指標を算出しましょう。具体的には下記を計算します。

  • デシルごとの購入金額合計
  • 全体に占める購入金額の割合(構成比)
  • デシル内の1人当たり購入金額

これらの指標を比較することで、売上に大きく貢献している上位デシルの特徴やデシル間の傾向の違いなどを分析することができます。

分析後は得られた知見をマーケティング施策に活かしていくことが重要です。分析結果を具体的なアクションに落とし込み、PDCAサイクルを回していくことで、効果的なマーケティングを実現できます。

デシル分析を効果的に行うポイント

最後に、デシル分析を実施するうえで重要な5つのポイントを詳しく解説します。


分析の目的を明確にする

デシル分析を行う前に、まず分析の目的を明確にしましょう。目的が曖昧なままでは得られた結果をどのように活用すべきか判断が難しくなりますし、目的に応じて必要なデータの種類や分析の視点も変わってくるためです。

例えば目的が「優良顧客の特定と維持」と「新規顧客の獲得」の場合、それぞれ下記のようなデータが必要となります。

  • 優良顧客の特定と維持が目的の場合
    • 必要なデータ:顧客ID、購入日、購入金額
    • 分析の視点:購入金額の多い順に顧客を並べ替え、上位デシルに属する顧客の特徴を分析する。例えば上位20%の顧客が売上の80%を占めているかどうかを確認し、その層に特化したマーケティング施策を講じるための基盤を整えるなど
  • 新規顧客の獲得が目的の場合
    • 必要なデータ: 顧客ID、購入日、購入金額、顧客属性(年齢、性別、居住地域など)
    • 分析の視点:優良顧客の特徴を分析し、類似した見込み客を抽出する。例えば優良顧客の多くが30代女性であることがわかれば、そのセグメントをターゲットとした広告配信や商品開発を行うためのデータを収集する

適切な分析期間を設定する

デシル分析を行う際は、適切な分析期間を設定することも重要なポイントです。

分析期間が短すぎると一時的な変動に振り回されてしまい、顧客の購買行動の特徴を的確に捉えられない可能性も。逆に長すぎる期間を設定してしまうと、過去のデータが現在の顧客像を反映していない恐れがあります。

一般的には1年程度の期間を設定することが多いようですが、業種や商品の特性によって最適な期間は異なります。例えば季節性の高い商品を扱う企業の場合、1年では購買サイクルを捉えきれないかもしれません。またスマートフォンのように買い替えサイクルの長い商品の場合、数年単位での分析が必要になるでしょう。

自社の商品やサービスの特性を踏まえ、顧客の購買行動を適切に反映できる期間を設定することが大切です。必要に応じて複数の期間でデシル分析を行い、結果を比較してみるのも有効な方法といえます。

外れ値の影響を考慮する

デシル分析を行う際は、外れ値(他のデータから大きく外れた値)の影響にも注意が必要です。例えば一度だけ高額な商品を購入した顧客がいる場合、その顧客はデシル1に分類されるかもしれません。しかし、その顧客が本当に優良顧客なのかは疑問です。

このような外れ値の存在は、分析結果を歪める要因となります。特に顧客数が少ない場合や、購入金額の分布に偏りがある場合は、外れ値の影響を受けやすくなります。

外れ値の影響を排除するためには、以下のような方法が有効です。

  • 一定金額以上の購入を除外する
  • 購入回数を考慮する
  • 中央値を用いる

外れ値の存在を認識し、それが分析結果に与える影響を適切に処理することが、正確なデシル分析を行ううえで欠かせない要素となります。

他の分析手法と組み合わせる

デシル分析はシンプルで分かりやすい分析手法である一方、購入金額のみに着目した一面的な分析になりがちです。顧客の購買行動をより深く理解するためには、以下のように他の分析手法と組み合わせることが効果的といえます。

  • RFM分析:最終購入日(Recency)、購入頻度(Frequency)、購入金額(Monetary)の3つの指標を用いて多面的に顧客を分析する手法。デシル分析とRFM分析を組み合わせることで、優良顧客の特徴をより詳細に把握できる
  • セグメンテーション分析:年齢や性別、居住地域などの属性ごとにデシル分析を行うことで、優良顧客像の理解が深まる

このように、デシル分析だけでは得られない知見を、他の分析手法と組み合わせることで補完していくことが重要です。RFM分析やセグメンテーション分析については下記の記事でも解説していますので、こちらもぜひご覧ください。

関連記事:顧客分析とは?7つの手法や手順、分析に有効なツールを解説

継続的に分析を行う

顧客の購買行動は常に変化するため、デシル分析は継続的に行うことが求められます

定期的にデシル分析を実施し、顧客の変化を追跡することで、マーケティング施策の効果測定や新たな施策の立案に活かせるでしょう。また分析を継続することで、自社の売上構造の変化や課題にも気づきやすくなります。

このように、デシル分析を継続的に行うことで顧客の動向や自社の課題を早期に発見し、適切な対策を講じることが可能となります。分析を一過性のものとせずPDCAサイクルの中に組み込んでいくことが、デシル分析を有効に活用するポイントです。

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デシル分析は顧客の購買行動を理解し、効果的なマーケティング施策を立案するための有効な手段です。ただし実際にデシル分析を実践するには、顧客データの収集や分析、施策の実行など、一定の手間とコストがかかります。

そこでデシル分析を含む様々なマーケティング分析から施策実行までをオールインワンで実現できるのが、EC特化型のMA/CRMツール「EC Intelligence」です。EC Intelligenceは顧客データの自動収集、セグメンテーション、シナリオ配信など、売上アップに必要な機能を網羅しています。

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