コラム

ABC分析のやり方は?意味や目的・注意すべきポイントも解説

ABC分析のやり方は?意味や目的・注意すべきポイントも解説
目次

ABC分析は、商品や顧客を重要度に応じて分類し、効率的に管理する手法です。限られた経営資源を最適に配分し、業務効率を向上させるのに役立ちます。

本記事では、ABC分析の意味や目的、具体的なやり方、そして注意すべきポイントを詳しく解説します。ABC分析を活用して、在庫管理や商品戦略の最適化を図ろうと考えている経営者・管理者の方は、ぜひ最後までご覧ください。

ABC分析とは

以下では、ABC分析の基本的な概念と、その基礎となる理論について解説します。

ABC分析は複数のデータを重要度ごとに分類して管理する手法

ABC分析とは、複数のデータを重要度ごとに分類して管理する手法です。商品や顧客などの項目を、重要度の高い順にABC3つのグループに分類します。

具体的には、売上高や利益率などの指標を基準として、上位から順にAランク(最重要)、Bランク(重要)、Cランク(その他)に分類していきます。一般的な分類基準としては、上位20%Aランク、次の30%Bランク、残りの50%Cランクとすることが多いですが、業界や企業の特性に応じて柔軟に設定可能です。

ABC分析を活用すれば、例えばAランクの商品には在庫切れを起こさないよう十分な在庫を確保し、Cランクの商品は必要最小限の在庫にとどめるなど、ランクに応じた適切な管理が可能となります。

ABC分析の基礎となる「パレートの法則」とは

ABC分析の理論的基盤となっているのが、「パレートの法則」または「28の法則」と呼ばれる経済学の原理です。この法則は、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが発見したもので、「全体の数値の大部分は一部の要素が生み出している」という考え方で成り立っています。

パレートの法則では、全体の約20%の要因が全体の約80%の結果をもたらすとされています。つまり企業活動の場合、売上の80%は上位20%の商品によってもたらされる、ということです。この法則をABC分析に適用すると、以下のような分類になります。

  • Aランク:上位20%の項目で全体の80%を占める
  • Bランク:次の30%の項目で全体の15%を占める
  • Cランク:残りの50%の項目で全体の5%を占める

このようにパレートの法則に則ってABC分析を進めることで、重要度の高い項目を特定し、その項目に注力することができます。結果として経営資源の効率的な配分につながるのです。

ABC分析の目的

以下では、ABC分析の具体的な目的について解説します。

事業の効率化

ABC分析の目的の一つは、事業の効率化です。ABC分析によって商品や顧客、業務プロセスなどを重要度に応じて分類することで、これらを効率的に管理することができるためです。

具体的には、Aランクに分類された最重要項目に対して、優先的に経営資源を投入します。例えば売上高の大部分を占める商品に対しては在庫管理を徹底し、品切れを防ぐことで機会損失を最小限に抑えることができます。また重要顧客に対しては、きめ細かなサービスを提供することで、顧客満足度の向上と長期的な関係構築を図ることが可能となるでしょう。

一方、Cランクに分類された項目に対しては過剰な資源投入を避け、必要最小限の管理にとどめることで、在庫コストの削減や倉庫スペースの有効活用につなげます。

このようにABC分析を通じて各項目の重要度を明確化し、それに応じた管理を行うことで、企業全体の経営効率を大幅に向上させることが可能となるのです。

経営戦略の立案

ABC分析のもう一つの目的は、効果的な経営戦略の立案を支援することです。ABC分析の結果は、自社の強みや弱み、市場での位置づけを把握することにも役立つため、より戦略的な意思決定を下せるようになるのです。

  • Aランク:マーケティング予算を重点的に配分したり、生産能力を増強したりと、強みをさらに伸ばすための戦略を立案することで競争優位性を高められる
  • Bランク:成長の可能性が高いため、積極的な投資を行ってAランクへの引き上げを目指す
  • Cランク:段階的な撤退や他社への売却といった選択肢も検討

さらにABC分析の結果を時系列で比較すれば、市場トレンドや自社の変化を把握することができます。それをもとに中長期的な戦略立案に活用することも可能です。例えば特定の商品カテゴリーがAランクからBランクへ移行している傾向が見られれば、その原因を分析し、新たな成長戦略を検討する契機となるでしょう。

ABC分析のやり方5ステップ

ABC分析を効果的に実施するためには、適切な手順を踏むことが重要です。ここでは、ABC分析を行うためのステップを解説します。

1. 分析に必要なデータを準備する

まずは、ABC分析に必要なデータを準備しましょう。分析の目的に応じて、売上高、利益率、在庫数量などの関連データを収集します。

データの収集には、販売管理システムやCRMツールを活用すると効率的です。これらのシステムから必要なデータを抽出し、Excelなどの表計算ソフトに整理します。データの正確性は分析結果に直接影響するため、入力ミスや重複がないか十分に確認しましょう。

また季節性のある商品の場合は年間を通じたデータを使用するか、特定のシーズンに絞ったデータを使用するかを検討します。

2. 構成比と累積構成比を計算する

データの準備が完了したら、次は構成比と累積構成比の計算を行います。構成比は、各項目の値が全体に占める割合を示すもので、累積構成比は上位から順に構成比を足し合わせたものです。

まず、分析対象の項目(例:商品別売上高)を降順に並べ替えましょう。次に、各項目の構成比を計算します。構成比の計算式は「個別の値÷全体の合計値×100」です。例えば、ある商品の売上高が100万円で、全商品の売上高合計が1000万円の場合、その商品の構成比は10%となります。

続いて、累積構成比を計算するために上位の項目から順に構成比を足し合わせていきます。例えば上位3つの商品の構成比が30%20%15%の場合、累積構成比は30%50%65%となります。

構成比と累積構成比の計算結果は次のグループ分けの基準となるため、正確に計算することがポイントです。

3. ACにグループ分けする

構成比と累積構成比の計算が完了したら、次はABC3つのグループに分類します。一般的な分類基準は以下の通りです。

  • Aグループ:累積構成比が0%70%までの項目
  • Bグループ:累積構成比が70%90%までの項目
  • Cグループ:累積構成比が90%100%までの項目

この基準は前述のパレートの法則に基づいていますが、比率は絶対的なものではなく、業界や企業の特性に応じて柔軟に調整することが可能です。

グループ分けが完了したら、各グループの特徴を把握します。Aグループは少数の重要項目、Bグループは中程度の重要性を持つ項目、Cグループは多数の比較的重要度の低い項目となります。

4. パレート図やグラフを作成する

分析結果を視覚的に表現し、より理解しやすくするために、パレート図やグラフを作成します。

パレート図の作成手順は以下の通りです。

  1. 縦軸に個別の値(例:売上高)、横軸に項目(例:商品名)を設定する
  2. 項目を値の大きい順に左から並べ、棒グラフで表示する
  3. 右側の縦軸に累積構成比のスケールを設定し、折れ線グラフで累積構成比を表示する

また円グラフを使用してABCグループの割合を表示したり、積み上げ棒グラフでグループごとの構成を表現したりすることも効果的です。これらのグラフを併用することで、分析結果をより多角的に把握することができます。

5. 分析結果から施策を考える

ABC分析の最終ステップは、得られた結果をもとに具体的な施策を立案することです。各グループの特性を考慮しながら、効果的な戦略を検討していきます。

Aグループに対してはもっとも重点的に管理し、リソースを集中的に投入します。例えば、以下のような施策が考えられます。

  • 在庫の適正化:欠品を防ぐため、十分な在庫を確保する
  • 販売促進:重点的なマーケティング活動を展開する
  • 品質管理:厳格な品質チェックを実施し、顧客満足度を維持する

Bグループは、Aグループに次ぐ重要性を持つため、効率的な管理が求められます。

  • コスト削減:生産プロセスの最適化や仕入れ先の見直しを行う
  • クロスセル:Aグループ商品との組み合わせ販売を検討する
  • 需要予測:適切な在庫水準を維持するため、需要予測の精度を向上させる

Cグループは、管理の簡素化と効率化を図ります。

  • SKU(在庫管理単位)の削減:不要な商品のラインナップを整理する
  • 自動発注システムの導入:在庫管理の省力化を図る
  • アウトソーシング:管理業務の一部を外部委託する

これらの施策を実行する際は短期的な効果だけでなく、中長期的な視点も持つことが重要です。また定期的にABC分析を実施し、施策の効果を検証しながら継続的な改善を図ることが望ましいでしょう。

ABC分析で注意すべきポイント

ABC分析は有効な手法ですが、適切に実施しないと誤った結論を導き出してしまう可能性があります。最後に、ABC分析を行う際に注意すべき3つのポイントについて解説します。

季節性を考慮する

ABC分析を行う際に重要なのは、季節性を考慮することです。多くの商品・サービスは季節によって需要が大きく変動するため、単純に年間データだけで分析を行うと誤った結論を導き出してしまう可能性があります。

季節性を考慮したABC分析を行うためには、以下のような方法が効果的です。

  • 季節ごとに別々の分析を行う
  • 移動平均を使用する
  • 季節指数を活用する
  • 複数年のデータを使用する

季節性を考慮することで各商品の重要度を正確に評価し、より効果的な在庫管理や販売戦略の立案につなげることができます。

売上高、利益率、在庫回転率など多角的に分析する

ABC分析を行う際は単一の指標だけでなく、複数の指標を組み合わせて多角的に分析することが重要です。売上高だけでなく、利益率や在庫回転率などの指標も考慮することで、より包括的な視点から商品の重要度を評価できるでしょう。

多角的な分析を行うためには、以下のような指標を組み合わせることが効果的です。

  • 売上高
  • 利益率
  • 在庫回転率
  • 顧客満足度
  • 市場シェア

これらの指標を組み合わせることで、例えば「売上高は高いが利益率が低い商品」や「売上高は中程度だが利益率が高く在庫回転率も良好な商品」など、より詳細な分類が可能になります。

結果として、単一指標では見逃されがちな重要商品を適切に評価し、効果的な経営戦略を立案できるようになるでしょう。

Cランク商品を軽視しすぎない

ABC分析を行う際はCランクに分類された商品を軽視しがちですが、これらの商品も企業にとって重要な役割を果たしているかもしれません。個々の売上は小さくても、その総和は無視できない規模になることがあるからです。

Cランク商品の管理方法としては、在庫の最適化や発注プロセスの効率化など、コスト削減に焦点を当てつつ定期的に再評価を行うことが重要です。またCランク商品の中から潜在的な成長商品を見出し、適切な販促活動を行うことで将来のABランク商品を育成することも可能です。

Cランク商品を適切に評価し管理することで、企業は安定した経営基盤を維持しつつ、新たな成長機会を見出すことができるのです。

他の分析手法と組み合わせる

ABC分析は有用な手法ですが、単独で使用するだけでは企業の全体像を把握するには不十分な場合があります。そのため他の分析手法と組み合わせることが推奨されています。

以下に、ABC分析と組み合わせると効果的な分析手法をいくつか紹介します。

  • SWOT分析
    ABC分析で特定した重要商品やサービスに対してSWOT分析を行うことで、その強み、弱み、機会、脅威を明確にすることができる。これにより、Aランク商品の競争力強化や、Cランク商品の改善策を具体的に検討することが可能
  • クロスABC分析
    複数の指標(例:売上高と利益率)を組み合わせてマトリックス分析を行う手法。これにより、「売上は高いが利益率が低い商品」や「売上は低いが利益率が高い商品」など、より詳細な分類が可能
  • RFM分析
    顧客分析に用いられる手法で、最新購買日(Recency)、購買頻度(Frequency)、購買金額(Monetary)の3つの指標を組み合わせて顧客を分類する。ABC分析と組み合わせることで、重要顧客と重要商品の関係性を明らかにすることができる
  • ポートフォリオ分析
    BCGマトリックスなどのポートフォリオ分析と組み合わせることで、商品の市場成長率と相対的市場シェアを考慮した戦略立案が可能となる
  • トレンド分析
    ABC分析の結果を時系列で比較することで、商品の重要度の変化やマーケットトレンドを把握することができる

これらの分析手法を適切に組み合わせることで、より多角的な視点から企業の現状を把握し、効果的な戦略を立案することが可能となります。

ただし複数の分析を同時に行うと、データの解釈が複雑になる可能性も。そのため分析の目的を明確にし、必要最小限の手法を選択することが重要です。

関連記事:RFM分析とは?目的や優良顧客を見つける手順・ポイントを詳しく解説

EC・通販の顧客データ活用ならEC Intelligenceにご相談を

ABC分析は、業務効率化や経営戦略立案に役立つ分析手法です。今回の内容を参考に、マーケティングに取り入れてみましょう。

しかしABC分析の実施には、正確で豊富なデータが不可欠です。特にEC・通販業界では、顧客データの適切な収集と分析が成功の鍵を握ります。そこでおすすめなのが、EC特化型のオールインワンMA/CRMツール「EC Intelligence」です。

そこでおすすめなのが、EC特化型のオールインワンMA/CRMツール「EC Intelligence」です。

  • データの自動収集と統合:購買履歴やアクセスログなど、ABC分析に必要なデータを自動で収集・統合します。
  • 高度な顧客セグメント作成:ABC分析に基づいた詳細な顧客セグメントを簡単に作成できます。
  • 多角的な分析機能:売上高、利益率、在庫回転率など、複数の指標を組み合わせた分析が可能です。
  • 迅速なサポート体制:ツールの開発に携わるエンジニアが直接サポートを担当し、素早く・幅広く・的確な回答を提供します。

EC Intelligenceを活用することで、ABC分析の実施から施策の展開まで、一貫して効率的に行うことが可能になります。

EC Intelligenceについて、詳しくは下記よりご確認ください。

EC Intelligenceの機能紹介ページはこちら

EC Intelligenceへのお問い合わせはこちら

EC Intelligenceの資料請求はこちら

機能に関するご質問やご相談は、以下よりお気軽にお問い合わせください。
機能に関するご質問やご相談は、以下よりお気軽にお問い合わせください。