今回は、シナブルで外部インターン生として働いている村井が小林代表に「ECシステムの選び方」についてインタビューを行いました。
村井:本日はよろしくお願いいたします。まず初めに、自社でECをやりたいと思った際、どのような選択肢が挙げられるのでしょうか?
小林代表:まず選択肢としてモールに出店するのか、または自社で行うのか、という2パターンにわかれます。モールに出店する場合はAmazonや楽天といったモールが挙げられます。この際、単に販売チャネルとして利用する場合もあれば、FBA(Fulfillment By Amazon)や楽天スーパーロジスティクスといったフルフィル系をサポートするようなサービスを利用する場合もあります。
村井:なるほど。次に自社で行うといった場合はどのような選択肢が挙げられますでしょうか?
小林代表:自社で行うといった場合、SaaS ASP系かパッケージクラウド提供系、スクラッチ系の3つに分かれます。具体的な製品名を挙げるとSaaS ASP系ではMakeShopやFutureshop、今旬であるshopifyなどがあり、パッケージクラウド提供系ですとecbeingやHIT-MALL、エルテックスDCなどがあります。また、スクラッチ系とはフレームワークなどを利用して独自にECサイトを構築するやり方になります。
村井:なるほど。多くのパターンがある中で、どのようにして自社にあったシステムを選べば良いのでしょうか?
小林代表:例えばSaaS系なのかパッケージ系なのかを選ぶ際に見るべきポイントは「各独自機能に対するニーズ」があります。独自機能というのは、例えば自社のビジネスモデルへの対応やグローバル対応、独自の価格決定方式(値引き)やプロモーション・顧客サービスや物流連携などへの対応が挙げられます。物流連携を例にとると、例えば関東方面と関西方面に倉庫がある企業から商品を10個買ったとします。その際関東方面の倉庫には在庫が7個、関西方面には5個あった場合、各倉庫それぞれから合わせて送るのか、いったんどちらかの倉庫に在庫を移動させてから送るのかなど、様々な送り方のパターンがあります。それによってサイト上への納期表現なども違ってきます。ECサイトにとって重要な機能やサービスは何か、それを標準であるいはカスタマイズで実現可能かどうかチェックすることもシステム選びにおいて重要になってきます。
村井:ではSaaS系かパッケージ系を選ぶ際、それぞれにどのような違いがあるのでしょうか?
小林代表:求められる要件を追加する際のやり方にそれぞれの違いが出てきます。例えば自社で100の要件があったとします。しかし、当然全ての要件を満たすSaaS系やパッケージ系はありません。仮にそれぞれが30の要件まで対応していた際、SaaS系はバージョンアップを待つか各機能やモジュールを売っているマーケットプレイスで機能を追加する、という方法があります。しかし、顧客のニーズに対応している機能は少ないので、やりたいことができないという場合も多いです。
村井:なるほど。ではパッケージ系にはどのような特徴があるのでしょうか?
小林代表:パッケージ系はプラグインやアドオンなどで機能を追加するやり方が多いです。しかし、プラス20の要件を追加しようとすると20以上のコストがかかってしまう場合が多く、機能全体を作り直さなければならないケースが多く見受けられます。そんな中、今話題なのがヘッドレスコマースやマイクロサービスアーキテクチャという考え方です。
村井:ヘッドレスコマース、マイクロサービスアーキテクチャとはどういったことを指すのでしょうか?
小林代表:簡単に言うと「それぞれの機能を分離させることで他のシステムに与える影響範囲を限定する」という開発手法のことです。複数の独立した機能を組み合わせてシステムを構築することで、機能カスタマイズを既存機能になるべく影響しないようにし、プラス20の要件をコスト20あるいはそれ以下でできるように構築することを目指しています。
村井:なるほど。他にSaaS系とパッケージ系の違いはありますでしょうか?
小林代表:「費用・構築期間と自由度のトレードオフ」という観点において違いがあります。簡単にいうとSaaS系は費用・構築期間が安く、短いですが、自由にカスタマイズできる点ではパッケージ系に劣ります。またパッケージ系は費用・構築期間が高く・長いですが自由度高くカスタマイズできます。しかし、最近ではSaaS系も柔軟にカスタマイズできるようになってきています。また、パッケージ系はモジュール化やテンプレート化によって費用・期間を抑えられるようにしてきています。
村井:パッケージ系のモジュール化やテンプレート化とは、どういったことでしょうか。
小林代表:分かりやすいところでは、フロントデザインのテンプレートを用意してすぐ使える状態にしておいたり、決済サービスで組み込みやすくするモジュールなどがあります。ECサイトのニーズの多様化に伴ってパッケージが標準で用意する機能、アドオン出来るモジュール、フレームワークに近い機能として完成はしていないがニーズに応じて柔軟にカスタマイズできるモジュールなどを組み合わせて構築しています。
村井:他にECシステムを選ぶ際のポイントはありますか?
小林代表:先に述べた「費用・構築期間と自由度のトレードオフ」という観点はもちろんのこと「どのような顧客サービスを提供したいか」によって選ぶシステムは変わってくると思います。少し話はそれますが、CVRを上げるサイトの改善やCRMでのリピート促進といった施策は100ある売上を120に押し上げるような積み上げ型の施策になります。一方で店舗受け取りを可能にしたり、店舗の在庫をECで販売するなど、提供する顧客サービスを考えた上でECシステムを選ぶことで、より大きな成果を生むことができます。つまり、自社で実現したい顧客サービスを起点にシステムを選ぶことが重要になってきます。
村井:最後に小林さんのおすすめのECシステムなどがあれば教えてください。
小林代表:有名どころですとSaaS系ではMakeshopやFutureshop、Shopifyなどが挙げられます。またパッケージ系ではecbeingやコマース21、G1commerceなどがあります。
・システムを選ぶ際は、「モールに出店」か「自社で行う」かの2パターンに分けられる。自社で行う場合SaaS ASP系、パッケージクラウド提供系、スクラッチ系の3つに分類される。
・ECサイトにとって重要な機能やサービスは何か、それを標準あるいはカスタマイズで実現可能かどうか、という観点でシステムを選ぶことが重要
・SaaS系とパッケージ系の違いは「求められる要件を追加する際のやり方」
要件を追加する際は、標準機能を組み合わせて業務を合わせる、バージョンアップを待つ、各機能やモジュールを売っているマーケットプレイスで機能を追加する
→しかし顧客のニーズに完全に対応していない場合が多い
要件を追加する際はプラグインやアドオンで機能を追加する、製品をカスタマイズする
→しかし大幅にコストがかかってしまうケースがある
・SaaS系とパッケージ系の違いは「費用・構築期間と自由度のトレードオフ」
費用・構築期間が安く、短い
自由にカスタマイズできる点ではパッケージ系に劣る
しかし最近ではSaaS系も自由にカスタマイズできるよう変化してきている。またパッケージ系はモジュール化やテンプレート化によって費用・期間を抑えられるように変化してきている。
・自社で実現したい顧客サービスを起点にシステムを選ぶことが重要